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「三国志」名場面集

Last update on 99/11/14

第三回「殴吏棄官」

「黄巾の乱」もなんとか鎮圧され、朝廷では論功行賞がされていた。しかしながら、悪徳宦官の仕切りで行われているとあっては、戦功よりも、「袖の下」がモノを言う。【董卓】のように連敗続きであろうとも金さえ払えば罪を免れるといった具合である。三兄弟の義勇軍は都の城外で恩賞の沙汰を待っていたが、無位無冠の上もちろん「賄賂」を使うことも知らない彼らのこと、いくら待っても任官連絡の使者は来るはずが無いのである。
	幸い、偶然通りかかった数少ない善良な廷臣の目に止まったことで〈安喜県〉という小さな町の警察署長(県尉)の職をゲットしたのであった。
わずかに余った軍資金を皆で分け合って義勇軍を解散し、不満タラタラの【張飛】をなんとかなだめ新天地に赴任した。ようやく公式デビューである。役人によるゆすり・たかりが当たり前のご時世、【劉備】の清廉潔白・公平無私・特上天丼な警察署長っぷりはアイドルの一日署長並みに庶民へ大好評。
	たとえ悪人でも「罪を憎んで人を憎まず」とばかりに、刑罰よりも更正に重きを置いたため街の治安はまたたくまに良くなっていった。
数ヶ月たって、朝廷より「新任役人の働き具合の検分」のため各地に監察官(督郵)が見まわりくるとのお触れが来た。実のところ、見まわりと名ばかりで暗に「賄賂くれないと悪く報告しちゃうよ～」という脅迫を込めた「袖の下大会」なのである。地方役人から監察官へ、そこから上役へ…で最終的には朝廷の悪徳宦官の懐に入る仕組みである。
	【劉備】の〈安喜県〉にも監察官がやってきた。自分の報告で免官も思いのままとあってあからさまなナメナメ態度である。宿舎がショボイだの料理がまずいだの、言いたい放題。今にもキレそうな【張飛】は、酒浸りの毎日になる始末。
働きぶりに何の落ち度もない【劉備】たちであったから、賄賂を出す気などさらさら無い。そもそも、民から不正な搾取もせずきちんと公費の安月給だけでまかなっているので、賄賂を出すような蓄えも無いのだが…。
	いつまでたっても「気の利いた贈り物」を持ってこない【劉備】に業を煮やした監察官は役所の書記官を拉致して、「【劉備】が汚職をしている」というウソの訴状を脅して書かせるという実力行使に出た。
街の居酒屋でヤケ酒中の【張飛】はこの騒ぎを聞きつけ、とうとう切れた！２人の兄から乱暴を働かないようきつく言いつけられていたのも忘れ、護衛の兵士達をぶっ飛ばして監察官の宿舎に殴りこんだ。
	引きずり出した監察官を馬繋ぎ用の杭に縛り付けると、傍らにあった柳の枝を鞭がわりに監察官をメッタ打ちにしたのである。【張飛】「もう我慢ならねぇ！てめぇみてぇな悪徳役人は生かしておくわけにいかねぇ！」街の人々は大喝采である。
やっと駆けつけた【劉備】に必至に命乞いをする監察官。【劉備】「おまえのような貪吏はすぐにでも切り捨てたいところだが、今日のところは見逃してやろう。帰って何とでも報告するがいい。こっちも、お役ご免だ！」懐から印綬(ハンコと飾り紐。役人の身分証明書でもある。)を取り出すと、ボコボコにされた監察官の首へ引っ掛けた。もちろん、朝廷の役人にこんなことをしてタダですむわけが無いので、３兄弟はわずかの部下を引き連れ、〈安喜県〉を去った。【劉備】の善政を慕う街の人々は城外まで泣く泣く見送った。

[第四回「霊帝崩御」へ続く]

●今日の楽屋●

	都の城壁「カキワリ」の全貌。あんま、中国のお城っぽく無いなぁ…
	本編の画像はみんな「セピア」に加工してますが監察官宿舎は本当は「真っ赤な絨毯」です。

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