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「三国志」名場面集
Last update on 07/01/15




第十三回「温酒斬敵」

　緒戦敗退の挽回を狙う連合軍は、本格的に《汜水関》を攻略するため、本陣を近くまで移し守備隊・援軍とのにらみ合いを続けた。全軍の兵力を持ってすれば、総攻撃でカタを付けられそうなものだが、人のふんどしで相撲を取り手柄を立てたい小勢力、自分の兵を温存したい大勢力、犠牲の多い攻城戦に加わりたくない者、世間体で出陣しただけの者などなど、思惑の違う各鎮の大将の寄り集まりでは結局消極的な作戦しか立てれず、軍議だけでいたずらに時間が過ぎていた。

　業を煮やした【董卓】軍は、戦利品の「【孫堅】の赤い頭巾」を掲げ、挑発してきた。
　これに応じて一騎打ちを買って出たのは、【袁術】配下の勇将【兪渉】。



　しかし、【華雄】には全く歯が立たず、数合のうちに斬り殺された。

　続いて出撃に名乗りをあげたのは、冀州の長官【韓馥】配下の武芸の達人【潘鳳】。



　評判倒れもいいところ、またまた勝負はあっという間についてしまい、命拾いはしたものの片腕を失ってほうほうの体で逃げ帰ってきた。

　たて続けの敗報に意気消沈の連合軍。　総大将の【袁紹】は配下の猛将【顔良】【文醜】を領地の留守居に置いてきた事を悔んだ。
　そんな中、次の将の出撃を促すよう場内を見回していると、【公孫瓚】の後ろに控えている者達が目にとまった。

【張飛】「兄者、座ってウンウン悩んでばかりで敵が居いなくなるわけじゃなし、
オレか関羽兄貴がひとっ走り行ってその野郎を倒しちまおうぜ！」

【袁紹】「これこれ、【公孫瓚】殿の後ろが騒がしいが、その者たちは何だ。」

【公孫瓚】「これなるは我が客将【劉備】とその配下の者達でございます。」

　紹介されたのを良い機会とみて、【張飛】につつかれた【関羽】が進み出る。

【関羽】「恐れながら、お許しいただけるなら、それがし【華雄】の首を取ってごらんに入れます！」

【袁紹】「ほほう、これは頼もしい言葉。して、そちの名と官職を申せ。」

【関羽】「関羽、あざなを雲長。あるじ【劉備】の元で歩兵頭を務めております。」

【袁術】「ムキーッ！そのような下賎の者を一騎打ちに出したとあっては我ら連合軍の恥じでは無いか！下がれっ下がれ！」」

【曹操】「【袁術】殿のおっしゃることはモットモではござるが、この者、ひとかどの豪傑に見まごう尋常でない面構え、敵もよもや雑兵 とは思いますまい。討ち取られても【華雄】めを油断させる足しくらいにはなりましょう。万一勝ったなら拾い物。我々の軍議がまと まるまでのツナギになるだけでも損はありませぬ。」
【袁紹】「貴公がそこまでいうなら、止めはせぬ。これ【関羽】とやら、大言に値せず逃げ帰ったなら打ち首であるぞ。誰か、こ の者に出陣の酒をとらせよ……」

【関羽】「その燗酒は戻ってからいただきとうござる。御免っ！」
一礼し、言うが早いか陣幕を出た【関羽】は、馬にまたがり【華雄】の陣にまっしぐらに駆けた。
【袁術】「ムキーッ、礼儀も知らぬか。これだから下賎の者は……」
【華雄】「ガハハ、烏合の衆とはこのことよ。もっとマシな将は居らぬのか。腹ごなしにもならぬは！」

【関羽】「劉玄徳が弟、関雲長なり！勝負！」

【華雄】「聞かぬ名だな、賊軍も将が尽きたとみえ……ん！こやつ強い！？」

【関羽】「相手が悪かったな。」

【華雄】「何だと？グハぁっ！！」
　二合目にして【華雄】はあっさりと【関羽】に討ち取られた。【華雄】が弱いのではなく、【関羽】が並外れて強いのである。
　まさかの敗北に呆然とする【董卓】軍を尻目に、【華雄】の首を手に急ぎ帰る【関羽】。
【関羽】「【華雄】のみしるしでござる。とくとご検分あれ。」

【曹操】「おお！何という手並み。世に隠れたる豪傑は居るものよ。」

【関羽】は、出陣前に温かい酒を注いであった盃を受け取り飲み干した。

【関羽】「褒美として戴く酒こそ格別。」

　酒は、まだ冷めていなかった。


【張飛】「うおーっ！オレも呑みてぇーっ！」

[第十四回「三英激闘」へ続く]

●今日の楽屋●
遠景用ミニ城壁。

連合軍の陣幕。




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